- Date
- 2016.02.04 Thu
- Cate
- 家族のこと
「出来損ない」な自分を補完するための自己満足な行為
我が家の引っ越し、祖父の入院、祖母の障害認定が相次いだ昨秋。
この頃が躁状態のピークだった私は、
不動産屋での手続きや引っ越し作業と並行して祖父母のサポートを買って出た。
今振り返ると毎日がとてつもないハードスケジュールだった割には謎にピンピンシャキシャキしていたように思う。
火事場の馬鹿力とも呼べるあのエネルギーは一体どこから湧いて出るのか。
うつ転してからというもの布団の中で丸くなる生活を送るしかない今は
「あれは本当に自分だったのだろうか?」と不思議でたまらない。
「この日はどうしても仕事が休めないからおばあちゃんの送迎をしてほしい」
「耳だけでなく足腰も悪いおばあちゃんを一人で病院へ向かわせるのは心配」
きっかけは母からのLINEメッセージだった。
母も含め、叔母たちは皆仕事をしており、従姉妹も夜勤ありの仕事をしている。
母は有休を消化してまで祖父の見舞い、祖母の送迎を誰よりも率先して行っていた。
仕事終わりに病院や祖父母宅へ行くこともあり、自宅へ帰る時間は日増しに遅くなっていった。
そんな姿を見て「働いていない私がここで動かないと誰が動くの?」と勝手に脳内変換された。
いくら病気が理由で働けない状況だとしても「働いていない」という引け目は人並み以上にあったと思う。
その引け目が貢献したい気持ちの原動力になっていた。
そしてもう一つ理由があった。
母が一人で問題を抱え込みすぎることでキャパシティーオーバーになると癇癪を起こすことを知っていたからだ。
母が癇癪を起こしたときの気質は、早口で相手に言い返す暇を与えないほど一方的に責め立てるような様で、
混合状態の易怒性が強く現れたときの私と酷似していると思う。
その姿を見ると今の自分と重ね合わせてしまい自己嫌悪に陥ると同時に、
思い出したくない私の子供時代を思い出してしまうので回避したかったのだ。
悪い予感は的中する。
祖父の病状が回復しつつあり、リハビリ病棟がある病院への転院の目処が立った頃、祖母が祖父の保険証を失くしてしまった。
その件が発端となり疲れが溜まっていた母が大爆発。
「どうしてそんな余計なことをしてくれるのよ!」と口走ったかと思えば、
後は何を言っていたのか思い出せないくらい早口で祖母を責め立てていた。
さらに祖母は人との会話が聞き取りにくいため、母が放つ言葉も理解できず、全くと言って良いほど会話が成立しない。
それがまた母の怒りを煽る。こうなるともう誰にも母の怒りを止められない。
祖母は私の隣でうろたえ、何も言えなくなり固まっていた。
このとき母は祖母に対して怒鳴り散らしていたのに、何故か私が責められている気持ちになっていた。
子供時代「お前は出来損ない!寄生虫!」と母から酷く罵られたことと重ね合わせてしまい、私まで目頭が熱くなっていた。
ここ数年は母が怒り狂う姿を見ていなかったので耐性が弱くなり、
突然の出来事故にいつにも増して怯んでしまったのかもしれない。
母がトイレに立ち、部屋に祖母と二人きりになったとき
「お母さんにも迷惑ばかりかけて私はもう生きてる意味がないね…」と祖母がボソリと呟いた。
そこまで言わせるほどに祖母を追い詰めた母に苛立ちを覚えたけれど、母の気持ちもわからなくはない。
「そんなことないから。お母さん、疲れてるといつもこんな感じだから気にしないで良いよ」
「保険証失くしても再発行したら良いだけなのに、お母さんもあんな言い方しなくて良いのにね」
こうフォローすると祖母は「ありがとう。菜ちゃんがいなかったら私、どうなってたか…」と
お礼を言いながら私の手に一万円札を握らせた。
このように祖母は心づけのように振る舞うことが多い。
障害者手帳に必要な証明写真を撮るときでさえ、
機械の操作方法を教えてくれた見知らぬ少年にチップとして千円札を渡したらしく家族は皆呆れ返っていたけれど、
きっとそれだけ「できないこと」に対する引け目を祖母は感じているのだろう。
「自分は役立たずなのだ」と追い込んでいるのは、実は私よりも祖母の方が深刻なのかもしれない。
一時はどうなることかと案じたけれど、奇跡的な回復を遂げた祖父は昨年12月末に退院することができた。
そんな祖父と祖母から引っ越し祝い兼これまでのサポートの謝礼として、
パンパンにはち切れんばかりのぽち袋を受け取ったのだけど、
私はこの謝礼を期待して祖父母のサポートを買って出たんじゃない。
でも別の意味での「下心」があったことは否定できない。
この日本という国は、どれだけ社会貢献したかによってヒトとしての格が決まるような風潮がある。
この言葉は好んで使用したくはないのだけれど、
国民の義務である労働や納税ができない所謂「社会的弱者」と呼ばれる人々は強く貶される。
私も祖母も社会的弱者のカテゴリに属していると思われるが、
労働や納税の面で十分に社会貢献ができないのなら、
せめて労働者である身近な人たちのサポートをしたいのが今の私の気持ちである。
「出来損ない」な自分を補完するための自己満足な行為なのかもしれない。
もっと悪く言えば、媚び売り、点数稼ぎ、罪滅ぼし、そういった言葉も当てはまる。
誰かの役に立つことで自分の存在意義を見出したり、自信をつけたり、劣等感を打ち消し安堵感に浸ることは悪なのか。
中にはそれを偽善と呼ぶ人もいる。
本当の善とは何なのだろうか。意識的に行う善と無意識的に行う善との違いだろうか。
となると「人に迷惑をかけた分、人の役に立ちたい」と心がける精神そのものが偽善になってしまう。
兎にも角にも私の場合は「私は出来損ないなのだ」という後ろめたさを払拭しなければ、どんな善でも偽善になるのだろう。



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